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藤沢周平の世界
2017・94エピソード
YBCラジオで放送した「藤沢周平の世界」の物語本編95作品を配信。
朗読はYBCアナウンサーほか。
暗い鏡
鏡職人の政五郎を姪のおきみが久しぶりに訪ねてきました。 十五の時に両親を失ったおきみは、一年ほど政五郎の家で暮らした後、奉公先が見つかって出て行きました。
政五郎はおきみが年に一、二度家に顔を見せる時に短い話をかわすだけで、二十七になる 今日まで、何軒か奉公先を替わったもののずっと女中奉公で暮らして来たという以上の ことは知りませんでした。
いまは木綿問屋に住み込みで働いているということでしたが、しばらくして、政五郎は おきみが殺されたことを知らされます。
実は木綿問屋で働いているというのは嘘で、おきみは自分の家で客をとる娼婦に なっていたのでした。
政五郎は今まで親身になっておきみを思ってこなかったことを後悔し、殺された背景を 探っていきます。

読み手:山本浩一アナウンサー
鏡職人の政五郎を姪のおきみが久しぶりに訪ねてきました。 十五の時に両親を失ったおきみは、一年ほど政五郎の家で暮らした後、奉公先が見つかって出て行きました。
政五郎はおきみが年に一、二度家に顔を見せる時に短い話をかわすだけで、二十七になる 今日まで、何軒か奉公先を替わったもののずっと女中奉公で暮らして来たという以上の ことは知りませんでした。
いまは木綿問屋に住み込みで働いているということでしたが、しばらくして、政五郎は おきみが殺されたことを知らされます。
実は木綿問屋で働いているというのは嘘で、おきみは自分の家で客をとる娼婦に なっていたのでした。
政五郎は今まで親身になっておきみを思ってこなかったことを後悔し、殺された背景を 探っていきます。

読み手:山本浩一アナウンサー
偏屈剣蟇ノ舌
首席家老の間崎新左エ門は、十二年前、当時首席家老だった山内市郎左エ門をはげしく批判し、ついに執政の座から追い落としました。
そのあとの十二年は間崎と間崎に与する者の天下で、思うとおりに藩政を動かし、唐物町の間崎の屋敷は、土産物をたずさえておとずれる家中、城下の富商、 領内の豪農でにぎわいました。
しかし、先の首席家老の息子、山内糺兼次は、その間にじっくりと派閥を養い、二年ほど前からついに二人の家老を抱き込んで巻き返しに転じていました。

読み手 佐塚崇恭アナウンサー
首席家老の間崎新左エ門は、十二年前、当時首席家老だった山内市郎左エ門をはげしく批判し、ついに執政の座から追い落としました。
そのあとの十二年は間崎と間崎に与する者の天下で、思うとおりに藩政を動かし、唐物町の間崎の屋敷は、土産物をたずさえておとずれる家中、城下の富商、 領内の豪農でにぎわいました。
しかし、先の首席家老の息子、山内糺兼次は、その間にじっくりと派閥を養い、二年ほど前からついに二人の家老を抱き込んで巻き返しに転じていました。

読み手 佐塚崇恭アナウンサー
冬の日
古手屋の清次郎は、ぶらりと入った飲み屋で、厚化粧の店の女にじっと見つめられます。
店を出てしばらくして、清次郎は女が幼馴染みのおいしだと気づきます。
清次郎が十四歳、おいしが八歳の時、清次郎は身体を張って不良たちの暴力からおいしを守ってやったことがありました。
生家の雪駄問屋が破産して苦労を重ね、今も悪い男と一緒にいる おいしを、清次郎は救い出そうとするのです。

読み手:青山友紀アナウンサー
古手屋の清次郎は、ぶらりと入った飲み屋で、厚化粧の店の女にじっと見つめられます。
店を出てしばらくして、清次郎は女が幼馴染みのおいしだと気づきます。
清次郎が十四歳、おいしが八歳の時、清次郎は身体を張って不良たちの暴力からおいしを守ってやったことがありました。
生家の雪駄問屋が破産して苦労を重ね、今も悪い男と一緒にいる おいしを、清次郎は救い出そうとするのです。

読み手:青山友紀アナウンサー
裏切り
研師の幸吉は、水茶屋で働くおつやと 夫婦になり、所帯を持ちました。四、五年は共稼ぎで金をため、
幸吉が研師の店を持てるまでがんばるつもりでした。気性が真面目なおつやは 水茶屋から家へ戻ってきてからも休むひまもなく働き、
「いい女房をもらった」と 幸吉は思っていました。 ある日の夕方、幸吉が帰宅すると、いつもなら戻っているはずのおつやの姿が ありません。
夜になっても戻らないため、異常を感じた幸吉は、おつやが働く水茶屋に 向かいます。すると水茶屋のおかみは幸吉に「今日は休みですよ」と告げ、
おつやがここ半年ばかり、時どき休んでいたことを明かしました。

読み手:小坂憲央アナウンサー
研師の幸吉は、水茶屋で働くおつやと 夫婦になり、所帯を持ちました。四、五年は共稼ぎで金をため、
幸吉が研師の店を持てるまでがんばるつもりでした。気性が真面目なおつやは 水茶屋から家へ戻ってきてからも休むひまもなく働き、
「いい女房をもらった」と 幸吉は思っていました。 ある日の夕方、幸吉が帰宅すると、いつもなら戻っているはずのおつやの姿が ありません。
夜になっても戻らないため、異常を感じた幸吉は、おつやが働く水茶屋に 向かいます。すると水茶屋のおかみは幸吉に「今日は休みですよ」と告げ、
おつやがここ半年ばかり、時どき休んでいたことを明かしました。

読み手:小坂憲央アナウンサー
夢ぞ見し
御槍組の小寺甚兵衛の妻・昌江は、夫の帰宅が毎日のように遅いことが 訝しくてなりませんでした。
理由を聞いても甚兵衛から満足のいく答は帰ってきません。 そんなある日、いつもより早く人の気配がしたので迎えに出てみると、
土間には 見たことのない若い男が立っていました。
溝江啓四郎と名乗る男は甚兵衛が江戸詰で出府したときに世話になった上役の息子で、 しばらく甚兵衛の家に厄介になり、
国元を見てまわるということでした。 しばらくして昌江は、家の前で啓四郎が襲われているのを目撃します。

読み手:青山友紀アナウンサー
御槍組の小寺甚兵衛の妻・昌江は、夫の帰宅が毎日のように遅いことが 訝しくてなりませんでした。
理由を聞いても甚兵衛から満足のいく答は帰ってきません。 そんなある日、いつもより早く人の気配がしたので迎えに出てみると、
土間には 見たことのない若い男が立っていました。
溝江啓四郎と名乗る男は甚兵衛が江戸詰で出府したときに世話になった上役の息子で、 しばらく甚兵衛の家に厄介になり、
国元を見てまわるということでした。 しばらくして昌江は、家の前で啓四郎が襲われているのを目撃します。

読み手:青山友紀アナウンサー
夜の城
黒江藩の御餌指人・守谷蔵太は五年ほど前に 熱病を病んで、以前の記憶を一切失いました。
ですが、疫病に襲われて死に絶えたと いわれる黒谷村に通じ、今は藩が通行を禁じている道には、何となく見覚えがありました。
ある日、鷹場の日取りを決めた酒宴で喜代と名乗る女が近づいてきて、御餌指組に石神又五郎という男がいないかと聞かれますが、
蔵太に聞き覚えはありません。 喜代はまた蔵太の妻三郷を長慶寺という寺で見かけたと告げ、蔵太は三郷の行動に疑いの目を向けるようになります。
しばらくして、今度は町で古手屋の男に声をかけられ、謎かけのような言葉を囁かれます。 すべては蔵太の失った記憶につながっているようです。

読み手:山本浩一アナウンサー
黒江藩の御餌指人・守谷蔵太は五年ほど前に 熱病を病んで、以前の記憶を一切失いました。
ですが、疫病に襲われて死に絶えたと いわれる黒谷村に通じ、今は藩が通行を禁じている道には、何となく見覚えがありました。
ある日、鷹場の日取りを決めた酒宴で喜代と名乗る女が近づいてきて、御餌指組に石神又五郎という男がいないかと聞かれますが、
蔵太に聞き覚えはありません。 喜代はまた蔵太の妻三郷を長慶寺という寺で見かけたと告げ、蔵太は三郷の行動に疑いの目を向けるようになります。
しばらくして、今度は町で古手屋の男に声をかけられ、謎かけのような言葉を囁かれます。 すべては蔵太の失った記憶につながっているようです。

読み手:山本浩一アナウンサー
女難剣雷切り
御旗組に勤める佐治惣六は、三十六になりますが最初の妻と死別し、そのあと迎えた後添い二人には次つぎに逃げられた女房に運の悪い男でした。
惣六は、三十半ばとはみえないほど髪が少なく、烏天狗とはこうでなかったかと思わせる男ぶりで、醜男という評価はまず動かないものでした。
惣六のじじむささには、最後の妻に逃げられて一人になると、さらに磨きがかかったようにみえました。
ところが、惣六はあの顔で存外な女好きで、家の女中が一年と居つかないのは、若い女中とみると手を出すからだという噂が立ち、聞いた者の腹に笑いがこみ上げました。
それでも、家中の者が惣六を口に出してさげすんだりしなかったのは、かつて城下で目覚ましい剣の働きを見せたことがあったからでした。

読み手 山本浩一アナウンサー
御旗組に勤める佐治惣六は、三十六になりますが最初の妻と死別し、そのあと迎えた後添い二人には次つぎに逃げられた女房に運の悪い男でした。
惣六は、三十半ばとはみえないほど髪が少なく、烏天狗とはこうでなかったかと思わせる男ぶりで、醜男という評価はまず動かないものでした。
惣六のじじむささには、最後の妻に逃げられて一人になると、さらに磨きがかかったようにみえました。
ところが、惣六はあの顔で存外な女好きで、家の女中が一年と居つかないのは、若い女中とみると手を出すからだという噂が立ち、聞いた者の腹に笑いがこみ上げました。
それでも、家中の者が惣六を口に出してさげすんだりしなかったのは、かつて城下で目覚ましい剣の働きを見せたことがあったからでした。

読み手 山本浩一アナウンサー
孤立剣残月
小鹿七兵衛は十五年前、上意討ちの命を受けて、鵜飼佐平太を討ち取りました。佐平太には半十郎という弟がいて、鵜飼家の廃絶にともない江戸にいる他家へ養子に出ていましたが、このほど再興された鵜飼家の跡をつぎました。
その半十郎が藩主とともに帰国することになり、七兵衛に果し合いを申し入れてくるというのです。
かつて英雄ともてはやされた七兵衛も、体力は衰え、剣の腕は落ちて、あげくは酒が もとで妻に疎んじられていました。
上役や朋輩に理不尽を訴え、助勢を乞い歩きますが、色よい返事はもらえません。 もはや自分ひとりで立ち向かうしかないと悟った七兵衛は秘伝の技に賭けて 決闘に臨みます。

読み手:小坂憲央アナウンサー
小鹿七兵衛は十五年前、上意討ちの命を受けて、鵜飼佐平太を討ち取りました。佐平太には半十郎という弟がいて、鵜飼家の廃絶にともない江戸にいる他家へ養子に出ていましたが、このほど再興された鵜飼家の跡をつぎました。
その半十郎が藩主とともに帰国することになり、七兵衛に果し合いを申し入れてくるというのです。
かつて英雄ともてはやされた七兵衛も、体力は衰え、剣の腕は落ちて、あげくは酒が もとで妻に疎んじられていました。
上役や朋輩に理不尽を訴え、助勢を乞い歩きますが、色よい返事はもらえません。 もはや自分ひとりで立ち向かうしかないと悟った七兵衛は秘伝の技に賭けて 決闘に臨みます。

読み手:小坂憲央アナウンサー
一匹狼
知行千石の旗本で、幕府目付を務める神名監物の腹違いの弟・神名平四郎は、家を出て長屋に住み、 「よろずもめごと仲裁」の看板を掲げて糊口をしのいでいます。
平四郎はある日、揉めごとならどのようなことでも引きうけるという噂を聞いた、東両国のあづま屋という料理屋のおかみに呼ばれ二階座敷にいました。
「お武家さまをお呼び立てしたりして、申しわけございません」
眼の前のおかみは感じのいい女で、歳はざっと二十六、七、おこまといいました。
おこまは平四郎に、むかしの知り合いの男の相談を持ち掛けました。

読み手 小川香織アナウンサー

知行千石の旗本で、幕府目付を務める神名監物の腹違いの弟・神名平四郎は、家を出て長屋に住み、 「よろずもめごと仲裁」の看板を掲げて糊口をしのいでいます。
平四郎はある日、揉めごとならどのようなことでも引きうけるという噂を聞いた、東両国のあづま屋という料理屋のおかみに呼ばれ二階座敷にいました。
「お武家さまをお呼び立てしたりして、申しわけございません」
眼の前のおかみは感じのいい女で、歳はざっと二十六、七、おこまといいました。
おこまは平四郎に、むかしの知り合いの男の相談を持ち掛けました。

読み手 小川香織アナウンサー

花のあと
花見も終え、帰り支度をした女剣士、以登に声をかけた若者がいました。 羽賀道場の江口孫四郎です。以登が先日の試合で見事に勝ったことを知っていました。以登の心は浮き浮きしていました。それは羽賀道場の逸材として剣名の高い江口孫四郎が以登の剣をたかが女子の剣法とは侮らず、好敵手として 認めていたからです。

読み手 山科栄子さん
花見も終え、帰り支度をした女剣士、以登に声をかけた若者がいました。 羽賀道場の江口孫四郎です。以登が先日の試合で見事に勝ったことを知っていました。以登の心は浮き浮きしていました。それは羽賀道場の逸材として剣名の高い江口孫四郎が以登の剣をたかが女子の剣法とは侮らず、好敵手として 認めていたからです。

読み手 山科栄子さん
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