馬廻組に勤める藩士・佐橋半之丞(さはし はんのじょう)は、 城下で制剛流(せいごうりゅう)を指南する剣客で、
剣の師である 三宅十左エ門(みやけ じゅうざえもん)の次女・乙江(おとえ)と祝言をあげる 約束をしていました。
しかしある日、乙江を若殿のおそばに 上がらせるようにという話が出ていることを、十左エ門から告げられます。
若殿の三五郎重章(さんごろうしげあき)は、いずれは新藩主の座につくべき ひとで、色好みの噂があり、夫人のほかに側妾が三人いました。
半之丞は、そういう話が出た以上、乙江との縁は絶たれたも同然で、かりに 十左エ門がその話をことわったとしても、
若殿を袖にした女を、妻に迎えることは 不可能だろうと思い、「乙江どののことは断念つかまつりました」と伝えました。
するとその席で十左エ門は、道場に伝えられてきた秘剣を半之丞にさずけることを約束します。
半之丞は師の声のなかに、取引きめいたひびきを聞いた気がしました。
読み手:山本浩一アナウンサー
剣の師である 三宅十左エ門(みやけ じゅうざえもん)の次女・乙江(おとえ)と祝言をあげる 約束をしていました。
しかしある日、乙江を若殿のおそばに 上がらせるようにという話が出ていることを、十左エ門から告げられます。
若殿の三五郎重章(さんごろうしげあき)は、いずれは新藩主の座につくべき ひとで、色好みの噂があり、夫人のほかに側妾が三人いました。
半之丞は、そういう話が出た以上、乙江との縁は絶たれたも同然で、かりに 十左エ門がその話をことわったとしても、
若殿を袖にした女を、妻に迎えることは 不可能だろうと思い、「乙江どののことは断念つかまつりました」と伝えました。
するとその席で十左エ門は、道場に伝えられてきた秘剣を半之丞にさずけることを約束します。
半之丞は師の声のなかに、取引きめいたひびきを聞いた気がしました。
読み手:山本浩一アナウンサー